Uボート (1981) »レビュー

DC版での点数です。

90点 2008/07/24 by 黄金のキツネ

先週末、平積みになっていた早川文庫の『シャドウ・ダイバー』上下巻が目に付きました。沈没した謎のUボートをめぐって遂には歴史が覆されるストーリーであり、久し振りに我を忘れて読み進められたノンフィクションでした。その中には本作に言及している箇所がいくつかあり、疲れる映画だけれどまた観てみるかぁ、と思い鑑賞することにしました。

映画は狭いUボートの艦内での生活が主体です。ですからクルーたちのアップのシーンが多く、現場でクルーたちと面と向かっているような気がしてしまいます。演出と演技の妙なのでしょうか、彼らの眼光、表情、そして顔に流れる汗が、台詞以上に彼らの心情を物語っており、それが言葉の壁を乗り越えてダイレクトに伝わってきます。おそらく字幕なしでもこの作品を堪能できるのではないかとすら思えてしまう程です。

ただ始めのうちは飽きてしまうかもしれません。出港してから会敵するまでの時間がおそろしく長くて単調なのです。でもその長さはこの作品の上で必要な時間だと思います。単調な時間を過ごすうちにいつの間にか狭苦しい艦内の息苦しさや、気取った先任士官に対する苛立ち、クルーたちの体臭や機械オイルの臭いが画面を通して直接肌に伝わって来る思いがします。そうなったらもうこの映画の術策に見事にはまってしまったことになります。クルーたちと同様に徐々に身体に疲労が蓄積してくるのを感じ、彼らと共にUボートの中で生活しているような気になってしまいます。そしてそれはこの物語の最後まで続きます。すごい映画です。

クルーたちの心情には、自らの戦果に対する期待や興奮や高揚もありましたが、大半は頭上を高速で動き回る駆逐艦に対する絶えざる緊張と恐怖で占められています。そして大破し深海に向かって沈み続けるときには、怯え、動揺、悲嘆、そしてついには祈りと諦めと絶望が現れます。それを彼らとともにリアルタイムで味わうことができます。

……そしてラストで味わう言いようのない徒労。そして虚しさ……。
数多い戦争映画の中でも抜きん出た傑作のひとつです。

なお私が観たのは完全版(一回目)とDC版(二回目と今回)でしたが、クルーたちにより共感できるという点では完全版(こちらは文句なく100点)のほうが優れていると思います。ただDC版ですらかなり疲れる映画です。

 

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