野良犬 (1949) »レビュー

やっぱ凄いと思った

70点 2005/01/06 by 理屈屋

ストーリー自体に目新しさはありません。
新米刑事が盗まれた拳銃で強盗事件が発生し、犯人逮捕に奮闘する新米刑事とそれを助ける老刑事を描いたお話です。
けれども、やっぱり黒澤明監督が作ると一味違っていました。社会や人間に対する洞察が深く、現代に通用するメッセージを持った作品に仕上がっていると思います。戦後すぐこれを作ったのは凄いと思います。
恐らく当時の物語ならば、憎むべき強盗犯を、正義のヒーロー刑事が、ただ捕まえ懲らしめるというのが王道だったのではないでしょうか。
ところが、この作品では犯人と新米刑事の身の上が似ていながら、追う側と追われる側に分かれてしまっていることを観客に考えさせるようになっています。
犯人が1度拳銃を返しに来るというくだりが渋く光ります。
三船敏郎さん演じる新米刑事の「世の中が悪いと言って悪いことをする奴はもっと悪い」という台詞と、それに対する「悪いことをして良い思いができるんなら、悪い事したもん勝ちだわ」という反論の言葉、更にそれに対する「じゃあ君、その服をなぜ着ないんだね」このやりとりが必見です。
近年のアメリカの犯罪映画、例えばセブン、ミスティックリバー、25時、トラフィックなどが描く、犯罪者と正義の味方と社会のありようは、既にこの時点でこの作品に描かれています。驚きです。
少し長いなと感じる、犯人の泣き叫ぶシーンがありますが、作品が主張したいと思われる気分がその間ずっと伝わって来ます。
繰り返しになりますが、人間と社会を深く洞察して繊細に描いているので、外見はともかく中身に古さを感じません。やっぱ凄いと感慨を新にする作品でした。

一つだけ注文をつけるとすれば、駅で犯人を見つけ出す際に、独白でなく画でやってくれたら最高だったのに、と思いました。

 

2人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • やっぱ凄いと思った

    2008/05/04 by メイプルタウン

    真夏の強烈な陽射し、他の作品での豪雨、暴風といった具合に黒澤・映画の天候はいつも“荒天”なのです。本当に、戦後すぐこれを作ったのは凄いと思います。

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