野良犬 (1949)
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天国と地獄の萌芽
2008/05/08
by
牧坂満
黒澤明は映画監督になる前はプロレタリア美術の運動の一翼を担った画家でした。十代で二科展に入選する才能だったのですが、食べていくために絵画から映画へと転向していくのです。よって、黒澤映画は実に絵画的演出方法を取っているのです。それは、拳銃を掏り取られた村上刑事(三船敏郎)が、昭和24年という戦後間もない東京の盛り場を汗だくで歩きまわるシーンに顕著に表現されています。村上刑事の体に、ヨシズや竹矢来越しに強烈な光を当て、影を出しています。村上刑事の焦燥感と酷暑の夏の暑さを鮮烈に印象づけている見事な絵画的ショットです。
戦後間もない警視庁は現代の警察機構より遙かに人間的組織だったようです。勿論、時代背景が有能な捜査官を渇望していたからこそ、上司が若い村上刑事を育成しようとする民間企業の理想の上司像のような姿勢が見られるのです。警察機構内部の横の流れも、強盗殺人を担当する“1課”に所属する村上刑事の拳銃盗難事件をアシストするようにスリ専門を担当する“3課”へ流れて、“鑑識課”に及ぶリレーをリアルに描いています。
映画「三丁目の夕日」にノスタルジアを感じた人々は、この映画に同じような感動を覚えるでしょう。それは、河を航行する輸送手段でもあったポンポン船であり、旧・国鉄の駅に設置されている木造階段であり、車の往来が無く、走行中も飛び乗りOKの路面電車なのです。TVドラマの「菊次郎とサキ」にも登場するどぶ川をコンクリートで囲んだだけで、上部は開放されている排水溝に丸太が渡された場所で張り込む村上刑事にビールとツマミを差し入れるスリのお銀の姿に貧しいが故の戦後の犯罪を痛感しました。そしてそこにはハーモニカをふく男も存在していて、哀愁を帯びたメロディが二人の感情を物語るように流れるのです。
日本人全員が食べるのに必死だった時代。一泊30円の木賃宿、焚き火と野宿で一夜を過ごす者たち、鯨テキ(現代では高級品)の看板、そして「酔いどれ天使」にも登場する水たまり。桜田門にある警視庁の前を走る路面電車、村上刑事と同じ復員兵だった強盗殺人犯の粗末な住処。しかし、貧富の差は確実に始まっていたのです。ショウウインドウの中のドレスが買えないダンサー、クライマックスの逮捕劇で流れる上流階級のシンボルだったピアノがある家。後の「天国と地獄」でも描かれた“格差社会”は現代の日本の姿を予見した映画でもあります。
戦後派のアプレゲールという言葉が時代背景にもなっていますが、志村喬扮する佐藤刑事の自宅の飾ってある表彰状の数々の半分は死刑囚を逮捕したことによるものなのです。同じ復員兵で同じように全財産が詰まったリュックを盗まれた二人でしたが、一人は刑事となり、一人は犯罪者となってしまうのです。誰もが時代に翻弄され、善と悪を隔てる分岐点に苦悩したことを黒澤イズムが問いかけます。
【国立近代フィルムセンター】鑑賞
【NHK・BS第二衛星放送】鑑賞
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ストーリーは全く違う映画のことを記述しています
2008/05/08 by
牧坂満
サイト管理側は多分、大映映画の田宮次郎主演による「犬」シリーズを間違えて記述したのでしょう。本編は戦後間もない東京で起きた、刑事の拳銃盗難事件を扱った映画です。
「映画生活」若葉マークなので、よく分かりませんが、このような場合はどうすればいいのでしょうか。
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