パリ、テキサス (1984) »レビュー

ヨーロッパ人の視るアメリカ原風景

80点 2007/08/31 by 月踊り

ヴィム・ヴェンダースは個人的には好きな監督ではないんですが、一つだけシンパシーを覚えるところがあります。それは音楽のシュミ。ライ・クーダーやヴァン・モリソンを好きだそうで。マーティン・スコセッシも同様ですが、彼のほうは結構好きですね。

ロッセリーニがイングリッド・バーグマンを、フェリーニがジュリエッタ・マシーナを、といった風に昔から、惚れた女優の為に映画を作った監督は山ほどおりました。しかし惚れたミュージシャンの為に映画を撮ったのは、おそらく彼のこの作品だけなのではないでしょうか。『巴里のアメリカ人』におけるジョージ・ガーシュウィンとも違います。これはライ・クーダーを使いたい、そのためだけに作った映画です。断言できます。

作品の内容は陳腐です。良きに悪しきに陳腐です。はっきり言ってどうでもいいような展開ですが、ここで大切な事は、それこそが欧州人が捉え憧れている“ブルースの原風景”なのだという事です。そしてその風景を“空50、地面50”という、ジョン・フォード的な構図の映像で表現しました。また主人公トラヴィスには極めて憂鬱な精神風土を与え、“彷徨える欧州人、ブルースを訪ねる”旅をさせたのです。言い換えれば『巴里のアメリカ人』ならぬ『アメリカの独逸人』だったんでしょうね。

そういう羨ましいモチーフで作ってしまったこの映画ですが、やはりその情念が凄まじかったんでしょう。ライのギターは映画史上にも特筆されるほどの素晴らしさで、このシュミの映画に数々の栄誉をもたらしたのでした。

 

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