ワイルドバンチ (1969)
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男たちの哀愁漂う人間描写(推敲版)
2008/05/20
by
牧坂満
イタリア製西部劇の人気に陰りが見え始めた時期に、ハリウッドが“This is 西部劇”だと言わんばかりに登場させたアメリカ製正統派西部劇です。当時はベトナム戦争に反対する平和運動や女性の地位向上が叫ばれる時代でもありましたので、保安官や正義のカウボーイが、LADYを守ってアウトローを退治するといった西部劇そのものにアンチテーゼが出され、衰退し始めた時期でもあります。
本作品は最後の西部劇作家とも言われたサム・ペキンパー監督の代表作であり、アクション映画の範疇だけに留まらない普及の名画です。余談ですが、高校3年生の時に、洋画初体験の後輩数名を引き連れて鑑賞しましたが、冒頭のシーンで流れる音楽に合わせて“タンタン、タヌキの…”と合唱し始めたり、題名をワイルドパンチと呼ぶのには苦笑してしまいました。
映画の舞台は20世紀初頭の西部であり、無法時代から近代国家に変貌しようとする時代に4人のバンチが、近代兵器で完全武装した圧倒的多勢の軍隊に絶望的な戦いを挑むといった構成なのです。主人公のリーダー役パイクに「慕情」の名優、ウィリアム・ホールデンを起用していますが、彼を除けば全員が黒澤明監督が好んで使いそうな男臭い男たちと思いましたが皆様のご意見は如何でしょうか。その4人のバンチが最後の死闘に向かうときの悲壮感を漲らせた表情は見事です。パイク一味とアパッチ軍団の戦闘が炸裂するクライマックスでは、ペキンパー独特の“死のダンス”と命名されたスローモーション撮影を駆使した映像を堪能することが出来ますが、弾丸を全身に浴びせられた人間が舞う美しくも壮絶な暴力描写は一種のカタルシスすら覚えてしまうのです。映画、前半の鉄道爆破シーンのスペクタクル映像も雄大ですが、ガンファイターとしては「ラスト・シューティスト」同様に、老境に入った男たちの哀愁漂う人間描写にも深みがあります。
平和主義者やフェミニストは激怒し、賛否両論の意見対立は炎上状態となりました。主人公たちは銀行強盗を行い、娼婦を買う、酒も浴びる程に呑む。日本国内でも大多数の女性からソッポを向かれた映画です。しかし、それが本当の西部なのです。西部の男たちの本当の姿なのです。でも、それは滅亡していく種族なのです。クリント・イーストウッドの「許されざる者」やケビン・コスナーの「ワイアット・アープ」等々の正確な時代考証に基づくリアリズム西部劇はサム・ペキンパー監督なくしては生まれなかったでしょう。CG全盛期の現代に警鐘を鳴らすような“格”の違う底知れない凄味をご堪能下さい。
【大分県別府市・映画館名不詳】劇場鑑賞
【ビデオ・マイコレクション】鑑賞
8人がこのレビューに共感したと評価しています。
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ディレクターズカット・特別版
2008/05/15 by
牧坂満
PC操作のミスなのか、システムの不具合なのか分からないのですが、どうしても「ワイルドバンチ」のレビューだけが、送付出来なかったので、敢えてディレクターズカット・特別版で送付したことをご了承下さい。
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システムエラーだと思います
2008/05/15 by
夢寝由来
牧坂さん、私もシステムエラーで6本が『ぎんた』名義になってます。
本作のパイク役は当初リー・マーヴィンがオファーされたそうです。つまり強盗団は全員女にモテナイ醜男だった筈ですが土壇場で辞退、そこでペキンパーはあえて健康状態が悪く実年齢より老けて見えるホールデンに依頼しホールデンはペキンパーの期待に応え、二人にとっては起死回生のヒットになったそうです。
本作のスローモーション多用は黒澤明が「七人の侍」の二箇所で見せた『男が倒れるシーン』からの影響でしょうか? -
Re: 男たちの哀愁漂う人間描写に深みあり
2008/05/16 by
牧坂満
スローモーション描写は、アメリカンニューシネマの「俺たちに明日はない」からの影響と言われていますが、そのアメリカンニューシネマ自体が黒澤明監督の影響を受けたと言われているので、「夢寝由来さん」御指摘の通りだと思います。
また、サム・ペキンパーは日本国内で賛否両論だった「影武者」での例の戦闘シーンを絶賛していましたので、御指摘の正確性は100%間違いないですね。
PS…逢坂剛が「墓石の伝説」講談社文庫、という西部劇ファンが泣いて喜ぶサスペンス小説を上梓しています。5月15日に購入しましたが、面白いの何の!!…正に、作品名、監督名、俳優名を網羅した西部劇百科事典といってもいいでしょう。 -
映画生活さん、有難うございました。
2008/05/16 by
牧坂満
システムの不具合を改善して頂いたことに感謝します。どうしても語りたかった「ワイルドバンチ」のレビューなので、送付出来て喜んでおります。
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男たちの哀愁漂う人間描写(推敲版)
2008/05/20 by
牧坂満
「夢寝由来さん」情報の通りのキャティングだと男どもは狂喜乱舞したでしょうが、女性客を動員させることは絶対に不可能になっていたでしょうね。
ロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」に同伴頂いた女性からは、次回はもっとロマンチックな映画にして、と言われた思い出があります。
「ワイルドバンチ」は高校生の男たち4人バンチで鑑賞し、当時のガール・フレンド“Y・T”さんとは、「女王陛下の007」を観に行ったのが幸いでした。 -
ペキンパーvsキャプラ等々
2008/05/22 by
夢寝由来
>平和主義者やフェミニストは激怒し、賛否両論の意見対立は炎上状態
牧坂さん、ペキンパーは本作を“見て激怒した平和主義者と名乗る奴らから殴られた。人間の本質は暴力だよ”とコメントしておりこれはフランク・キャプラの信念“人間の本質は善であると信じてます”と対極ですね。キャプラ映画の顔だったジェームズ・スチュワートは同時にアンソニー・マン西部劇の顔でもありますが人間は両面を持っているのですね。
現にペキンパーも本作の翌年「砂漠の流れ者」では生き残る厳しさとその後の成長した男の優しさを見事に描いています。 -
パイク・ビショップ役の候補
2008/08/25 by
夢寝由来
牧坂さん
意外な主役候補が分かりましたので報告致します。
マーヴィンが辞退した後、ペキンパーの構想にはジェームズ・スチュワート、チャールトン・ヘストン、グレゴリー・ペックの案もあったそうです。
全員190cmを越える長身で正義感キャラ、つまりペキンパーは見るからに悪党ヅラのマーヴィンから善人ヅラの俳優を配役する事で“人間の本質は暴力だ”というテーマを強調したかったのだと推測できます。
製作者の意図は女と子供の客を動員出来るだったでしょうが。
結果として180cm未満のホールデンに決まって大正解だったと思います。長いスランプだったホールデンだからこそ鬼気迫る演技になったのだから。
ちなみに「バンドレロ!」のジミーの役名はメイス・ビショップで、ビショップはテキサスやメキシコに多い名前かも知れません。 -
希少価値的(ブラボー!)
2008/08/26 by
牧坂満
「夢寝由来」さん、本当に興味津々になる情報をいつも有難うございます。サム・ペキンパーのキャスティング構想にのぼったジェームズ・スチュワート、チャールトン・ヘストン、グレゴリー・ペックの正義感キャラは私の独断・偏見で見て全員文句なしです。但し、私個人の意見としては、上記3人に加えて貰いたい俳優を推薦するとすれば、ヘンリー・フォンダでしょうか。
そうなると、ペキンパーよりロバート・アルドリッチの方が悪党ヅラ俳優を勢揃いさせたキャスティングをします。「特攻大作戦」や「北国の帝王」等を観た女性は希少価値的(ブラボー!)存在と言っていいでしょうね。 -
ハンクなら完璧すぎる!
2008/08/28 by
夢寝由来
牧坂さん
ペキンパーの候補者人選は三人とも合格点ですか?同感です。でもジミーやグレッグならヒゲを拒否したのではないでしょうか?
確かにパイク役のリストにヘンリー・フォンダが載ってなかったのは意外ですが、彼なら上手過ぎてパイクでもデュークでもどちらを配役されてもビシッと演じる事が出来たでしょう。
バート・ランカスターも載ってませんが彼なら多分脚本の変更を≪もっとカッコよくしろ!≫と要求したでしょうね。
見るからに悪役が似合いそうな残忍なカーク・ダグラスや冷酷なリチャード・ウィドマークが候補圏外だったのは何故か当然のような気もします。
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