ノスタルジア (1983) »レビュー

雨と湯と水と、酒と油と炎

90点 2008/07/22 by くりふ

シネマヴェーラ渋谷「イタリア萬歳!」特集上映にて。
これと「道」が二本立て。よいプログラムでした。

久しぶりにみたフィルムは、流石に劣化したのか、
暗い部分はかなり潰れていましたが、醸し出される美、
としての劣化はまったくなかったですね。
尋常じゃない力を放つ、全カットを堪能しました。

本作は水のようですね。流れ込んで来るものに一旦身を任せ、
自分の中の循環を、再確認するような映画だと思います。
今後も何度か、思い出したように取り出し、流したい。
その度に印象は違うのだろう、という気がします。

今回はより「狂気」について、思い返す機会となりました。
ノスタルジックな想いは、必ずしも美しいとは限らないこと。
過去に過度に浸るのは退化であり、そこに妙な力が溜まると、
アブナイ人が出来上がっちゃったりします。
家族にも逃げられた、本作のドメニコという初老の男は、
神というノスタルジーから抜けられなくなったようでした。
そして、タイムマシンもないのに、過去に戻れ、と叫びます。

ドメニコの住居兼心象風景、な、水浸しの廃墟が凄い。
天からの雨は、彼にも豊かに降り注ぐのに、穴だらけだから、
余計な処に溜まったりして、美しいのに少し、淀んでいる。
廃墟には彼以外、無言の犬がいるだけで、どこまでも孤独。

そんな彼でも、想いの一部は引き継がれるがこれは何だろう?
小さな炎も一見、狂気のようだが、燃え尽きて純化した、
ドメニコの儚い芯、とも思えてくる…。

水でも火でもなく気、を感じさせるのが、
昔確か、ボッティチェリの絵のよう、と評された記憶がある
(ヴィーナスの誕生、を指してたんだろうか?)、
クール・ビューティ、エウジェニアの淡く光るロングヘア。
この髪の空気含有量がまた尋常じゃない。何、この浮遊感!
ヘアケア製品の広告塔にしたら売上増、間違いないと思う。

 

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