ディア・ハンター (1978) »レビュー

シネマスコープ画面を生かしきっている

90点 2008/04/26 by 夢寝由来

題名について考えた。
The Deer Hunter(鹿を狩る人)、何故、「鹿」なのだろう?RaccoonアライグマやFoxキツネでは成り立たないのか!
Deerは発音次第で(聞き手次第で)Dear「愛しの」になってしまう。Hunter狩人を銃つながりで兵士Soldierに変換すれば「愛しの兵士」か?
もう一つは「鹿」は肉は食用に、皮は革として衣類やバッグや靴(モカシン)に加工出来、しかも角付き頭部は剥製として室内装飾品になるという誠に人間にとって都合の良い草食哺乳類です。
「鹿」はヴェトナムへ送られる人間そのものにも思える。
当時、北米の鹿は人間に滅多に危害を加えない山の高所に生息していた。従って「鹿狩り」は足場の悪い登山が必要だからかなりの体力と危険を伴う趣味だった筈だ。
メインになる男たちは地元の工場に勤務するブルーカラー族でトラックと自動車を競争させる危険なゲームを平気で行い、狩りに行く途中で仲間を置いてきぼりにする他愛ない悪戯をする姿が群像劇として無理な演技をせずに自然体でカメラに捉えられている。
ところが、地元バーでのピアノ演奏から一気に戦火のヴェトナムへ飛んだり、捕虜になってあのゲーム、ヘリでの救出シーンもかつてのアクション映画の描かれ方とは一線を画する冷徹さ等々中盤から故意に荒削に編集したような展開に豹変する。
ロバート・デ=ニーロが全篇を通して主演らしくない描かれ方で後半残り1/3でやっと主役らしく振舞うが、むしろクリストファー・ウォーケンの方が印象に残る。
製作や脚本作りにも参加したマイケル・チミノ監督は本作で燃え尽き症候群だったのだろう。
ヴェトナム戦争物と1970年代の映画が鬼門の私でも本作をためらい無く名作認めるがやはり好きになれない。
当時は横長のシネマスコープ・サイズが敬遠されスタンダードで撮影したネガを天地削除し広角レンズを用いビスタ・サイズで上映する方式が多かったが本作のカラー・シネスコ画面は当時「タワーリング・インフェルノ」「スター・ウォーズW」と並んで見事な画面構成だったと思う。
個人的にはヴェトナム挿話としてウソでもいい「フォレスト・ガンプ」支持派です。

 

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  • Re: シネマスコープ画面を生かしきっている

    2008/04/26 by 星空のマリオネット

    夢寝由来さん、こんにちは。
    レビュー大変興味深く読ませてもらいました。タイトルである「ディアハンター」の解釈も頷かされるものがありました。

    「高山に住む神聖な鹿は一発で仕留めなければならない」というマイケル(デ・ニーロ)の言葉・信条が、最期の瞬間、壊れてしまったニック(ウォーケン)の心に甦ったのだと思います。ニックの人間としての意志。神聖な意志。

  • Re: シネマスコープ画面を生かしきっている

    2008/04/27 by 夢寝由来

    星空のマリオネットさん、
    本レビューはあなたとじゃりちょこさんのレビューがきっかけで再見したい気分になり投稿しました。
    最近は「若き獅子たち」のようなC調か手抜きのレビューが多かったのですが本作に関してはウカツに手を出せない神聖さを感じたので真摯に書いたつもりです。
    デ=ニーロとウォーケンは実年齢は同じだったのですね。
    ウォーケンは本作の成功で順風満帆なスターになれる筈だったのですが同じチミノ監督の「天国の門」が興行的に『地獄の門』になってしまい同世代のハリソン・フォードやマイケル・ダグラス、リチャード・ギア等の台頭で活躍の場を追われたという哀しい現実が本作のニックと重なってしまいます。

  • Re: シネマスコープ画面を生かしきっている

    2008/04/27 by 星空のマリオネット

    夢寝由来さん、ありがとうございました。
    夢寝さんのレビューにある、映画のシーン説明やシネマスコープのことを含め大変面白く拝見しました。勉強にもなりました!

    それから、私は俳優のことは余り意識せずに観ているので、夢寝さんのようには全く詳しくありません。確かにクリストファー・ウォーケンは大スターにはなれなかったのですね。
    それでも、昨年末頃だったか、ミュージカル映画の「ヘアスプレー」を観たときに、主人公の女の子の、ちょっと老けたユーモラスな父親役で登場した彼を発見して、嬉しくなってしまいました。

  • クリストファー・ウォーケン

    2008/04/28 by 夢寝由来

    星空のマリオネットさん、
    追伸です。
    私も「マイ・ボディガード」で主人公の親友役で登場した時は嬉しく思いました。
    大スターになれたか否かなどは二次的評価であって本作を語る場合どうでも良いかも知れません。生涯に1本でも輝いている作品があれば、その役が“もし他の役者が演じていたら…”と疑問を抱く余地が無いほどの適役ならそれで充分ですね。
    群像劇である本作は役柄の分類上『助演』ですが印象度は人物中抜きん出てましたね。

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