岸辺のふたり (2000) »レビュー

巧みな演出でした

90点 2005/02/09 by どら☆

良い作品だった、と思います。

素直に感動したか?泣けましたか?と言われると、
ドラマ性バチバチ(笑)の感動巨編が好きな私としては、
そこまで盛り上がる前に終演を迎えたと言うのが本音ですが、
この作品のテーマを長い時間で書き込まれれば、
多分泣いたでしょう(笑)
ただ、その代わり「上手だなぁ」という感銘は薄れたような気がします。

泣ければ良い作品か?
感動すれば良い作品なのか?
という議論は割合このサイトでも見られますが、
泣くこと・感動すること、と
それを喚起させた作品が【良い】こととは、
必ずしもイコールでは多分ない。

通常の尺をつかい本作のテーマで感動作を作ることは、
多分本作を作ることよりもずっと容易かった、
と思います。
そこを踏みとどまるかのように、この長さでまとめきった姿勢こそ評価されるべきでしょう。

戻り得ぬ時間の流れを象徴させるように、
アクセントを持ちながらも、
車輪(=人生)の回転は右から左へ(奥から手前へ)一方向での動きを刻む。
その暗喩の上手さ。

常に父親に思いを馳せ、
旅立った場所で自転車を止め続ける娘が、
唯一素通りする恋人との二人乗りシーン。
その直後に絶妙のタイミングで夫と子供たちとの楽しげなシーンが入るだけに、
(恋人と同一人物かどうかはともかく)
観客が素通りした娘に対する寂しさを感じる間もなく、
ああ良かったねと思わせる展開の鮮やかさ。

ラストシーンに至るまでの岸辺の変遷の描写を含めて、
一人の人間の全人生に匹敵する時の流れを、
わずか8分間で見せ、
見終わった後に映画を観ることの豊穣感を感じさせたのは、
テーマ云々よりもそれを料理した、
計算し尽くされた極上の演出の勝利でしょう。

こういった方向の作品を作り出し得ることは、
頭では分っていましが、
分っていることと、
それを実際に観ることで得られる幸福感は異なる、
と言う当たり前のことを再認識。

良い作品でした。


ちなみに併映の『お坊さんと魚』を観て、
キャラデザ・動きが坂田靖子だぁと思いながら、
やはり日本ではこの手のセンスは
動画(アニメ)より漫画(コミック)に流れたんだろうなぁ、
なんてことを思ったのは、
私だけですか、ハイ。

 

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