ロスト・イン・トランスレーション (2003)
»レビュー
あうんの呼吸
2008/05/11
by
cheaphemp
以前に観た時は、正直言って「?」な印象でした。目の前に突きつけられた東京や日本人像がやけにリアルで、拒否反応があったのかもしれませんし、或いは宣伝の先入観から、ラブ・アフェアものとして観ようとしていた事が誤読のきっかけとなったのかも。今回、タイトルの意味を解き明かすつもりで観賞したら、するりするりと入ってきました。「Lost In Translation」…一番直球でいくと、「翻訳の中で失われた言葉」。そしてまた「言語化することで失われた感情」とも捉えられるでしょうし、そうした中で迷子になる、といったニュアンスも含まれているように思います。もとよりソフィア・コッポラは、台詞は多用せずに、色彩であったり、光であったりと、行間で物語るタイプの監督。今作の主人公、ボブとシャーロットも多くは無言で、その孤独や空虚を表現していました。いつも間の悪い妻からの連絡。多忙な夫との噛み合わない会話。そんな時ふと出会った二人は、ことさらに会話をせずともなんだかラクチンに通じ合える。そう、まさにあうんの呼吸!最近はKYなんて言葉も生まれる位ですが、言わんや本来これは日本人の得意とするところ。象徴的に描かれた生け花やお嫁入りのシーンでは、静かに対象と心を通わせる、日本人のそうした精神性に対する強いリスペクトを感じます(反面異常なまでの子どもっぽさや、マニュアル化された部分もきちんと描かれてはいますが)。彼らの交わした情感はラブ・アフェアとは程遠いものですが、友情にしろ、人類愛にしろ、間違いなくラブではありました。最後にささやく愛の言葉が聞きとれないところも、またニクい演出。
(レンタル・セル)
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あ・うん
2008/05/11 by
メイプルタウン
> 「Lost In Translation」…一番直球でいくと、「翻訳の中で失われた言葉」。そしてまた「言語化することで失われた感情」とも捉えられるでしょうし、そうした中で迷子になる、といったニュアンスも含まれているように思います。…お見事な解釈だと思います。…ソフィア・コッポラ監督自身もヒロインと同じように日本滞在を体験しており、それによる自伝的作品だと聞いています。映画は「バベル」のように言語問題だけでなく、そこに生活する全ての人々の人間関係でお互いに理解し合うことの難しさをテーマとしているので、台詞を多用せずに演出したのが成功の要因だと思います。
これからも素敵なレビューをお待ちしております。 -
>メイプルタウンさま
2008/05/13 by
cheaphemp
身にあまるお言葉です…ありがとうございます。
日本が見下されている、という向きもあるようですが、
私も、もっと普遍的な関係性のむずかしさを描いていたように思います。
でなければ、わざわざ“通じにくい”アメリカ人
(最たるは必要以上にオバカに描かれたハリウッド女優)
をわざわざ配置しないですものね。
言葉の通じない異国の地にひとりでいるということは
私も経験のあることですが、奇妙な浮遊感を生じます。
パークハイアット上層階のあの情景も、だからこそ
不安定なこころをよく映し出していたと思いました。
…なーんて、今思いついたことなのですが。
こうした会話からもまた新たな発想が出てきたりして、嬉しいです。
これからも、よろしければご意見お聞かせください*
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