椿三十郎 (1962) »レビュー

印象的な一輪の白い椿

80点 2008/06/28 by 星空のマリオネット

数日前に森田芳光監督の「椿三十郎」を観ましたが、本家黒澤明監督の「椿三十郎」も久々に観てみました。
さすがに楽しい映画になっています。

やはり三船の三十郎が図抜けて魅力的ですが、他の役者もそれぞれに面白い。
特に、伊藤雄之助、藤原釜足、小林桂樹らのとぼけた味を活かした演出が巧い。最初から特定の役者を意識した脚本になっているんではないでしょうか。捕虜であるはずの小林が押入れの中に引っ込み襖を閉めるスピード感の変化なんて最高!
いずれにしても演技に過剰感がなく自然です。役者さんたちの力量と緻密な演出の存在を感じます。

実は森田監督の映画では、椿が流れる箱庭的な小さなシーンをクライマックスシーンとしていることに、物足りなさを感じてしまいました。
しかし、モノクロール映画である本作では、一輪の白い椿が流れるシーンに気品と輝きがあって、本当に美しかった。クライマックスに相応しいシーン! 抜き身の刀である三十郎と清らかな白い椿の組み合わせが新鮮。

どこか浮世離れしているけれど本質を掴んでいるように見える城代家老の奥方(入江たか子)の存在の意味を、三十郎は理解している。
そんな彼の立ち去る姿も潔い。

PS
森田監督のリメイクでやりたかったことも少しだけ分かったような気がします。
森田監督が黒澤監督の本作を観て、こんなシーンも観たかったといったシーンを追加しているように思います。

冒頭のお堂のシーンの前に、森の木々の中を進む侍の群れのシーンを挿入することで緊迫感を高めたい。
人を斬る恐ろしさを、流れ出る残酷な血によってではなく、三十郎の激しい動悸により表現したみたい。
一瞬の殺陣をスローでもう一度見てみたい。
三十郎を演じる三船の後姿をもっと見送っていたい。
・・・・

 

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