犬神家の一族 (1976) »レビュー

斧・琴・菊

70点 2005/08/12 by 倉島穂高

 ちょうど私が中学に上がる前後の頃に突如、横溝正史ブームが盛り上がり、作品が次々と映画化・ドラマ化されました。私は原作→テレビ(古谷一行)→映画(石坂浩二)の順で鑑賞しています。その後のテレビ版も観たような気がしますが、記憶に残ってません。京極夏彦や大槻ケンヂの文章を読んでいると、「ああ、彼らも私と同じくらいの多感な年頃にあの横溝ブームを体験したのよね。横溝だけでなく乱歩にも耽溺したんだな〜」と実感できてニヤニヤしちゃう。
 他作品も含めた歴代の金田一耕助の中では古谷一行がピカイチだと私は思っているのですが、もしかしたら最初に刷り込まれた映像だからなのかもしれません。でもやっぱり、原作から抜け出してきたような金田一だと思うな〜。石坂浩二はちょっと品が良すぎるような気がします。その他の配役も、圧倒的にテレビ版のほうが原作のイメージどおりだと思うのですが、唯一どうしても気に入らなかったのが珠世さんです。まぶたと唇のぽってりしたあまり美しくない女優で、とても「日本一の美人」には見えない! 珠世さんだけは映画の島田陽子に軍配が上がりますね。ただし彼女はやせぎすで特に上半身が薄っぺらく、着物があまり似合わない。『白い巨塔』出演時ほどは美しくないのが残念です。
 本を読む分には情念うずまく横溝正史よりもスマートで都会的な江戸川乱歩のほうが断然好きですが、乱歩作品はどうも映像化すると荒唐無稽すぎて滑稽になってしまう。その点、横溝作品のおどろおどろしさは映像向きですね。今後も絶えることなく、新たな金田一が生み出されていくことでしょう。
 面白いサイトを見つけたので、皆様もぜひどうぞ。→<リンクURL>

 

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  • 「斧・琴・菊」を「斧・琴・芥子」に置き換えると。

    2008/03/13 by 牧坂満

     映画全体の底辺に沈殿している人間の怨念は犬神家の膨大な遺産相続の争奪戦だけのみならず。犬神財閥そのものが日清戦争・日露戦争・大東亜戦争の政商として、アヘンを軍部に納入することによって巨万の富を得たことに起因するのではないかと思います。
     日本軍部と犬神財閥は三つの大戦で戦死していった兵隊たちの死屍累々の上に成り立っています。その怨霊たちの見えざる手によって、相続人たちは愛憎劇を演じさせられたのではないでしょうか。犬神家の三種の家宝である、よきこと聞く「斧(よき)・琴・菊」は「斧(よき)・琴・芥子(けし)」が裏面史、つまり「よきこと消し」と解釈してみると、このミステリーが壮大な悲劇であることが分かりませんでしょうか。

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