黄金 (1948) »レビュー

これは凄い映画!

90点 2007/10/03 by 星空のマリオネット

1948年公開のモノクロール映画ですが、驚くほどテンポが良く密度が濃い作品です。
上映時間は約2時間。その序盤の僅か30分ほどの時間に、普通の映画の1時間分以上の物語が凝縮され詰まっていて、その後の展開の準備が万端に整えられます。

この映画は、「異国の地メキシコで職にあぶれた二人のアメリカ人の男(ドブス、カーチン)と年老いた山師(ハワード)が、一攫千金を夢見て金鉱を探しに出かけ金を手に入れるが、その後・・・」という物語です。

舞台となるメキシコのとある町とそこに登場する人間たちの生き生きとした様子は、現実感抜群で、半ば浮浪者のように主人公ドブスを演じるハンフリー・ボガードの身なりの汚さも徹底しています。
また、一人一人の人間性が見事に描き分けられており、善人ぶった紳士が突然豹変し暴力をふるい激しい殴り合いの喧嘩になる場面なんて、今の映画も顔負けの凄みのある迫真のシーンです。
(ローアングルの視線、即ち殴り倒された者の視線から見る、台詞もない喧嘩のシーンは、無機的で本当に怖い!)

先ずはドブスを演じるハンフリー・ボガード。
彼が鬼気迫る演技を見せてくれます。映画の序盤ではそのすさんだ心と生活ぶりを、中盤から終盤にかけてはその身勝手さと強面の裏側にある脆弱な精神力からくる凶行を、怖いほどリアルに演じています。
一方、ハワードを演じるウォルター・ヒューストン(監督の父)の大らかで賢く、人生を悠々と楽しむ年配者ぶりもまことに見事です(本作でアカデミー賞助演男優賞受賞)。過ぎ去ったことを吹き飛ばし、大気からエネルギーを吸い込むためであるかのような「大きな高笑い」が、今も耳の奥で響いています。
また、メキシコの森に住む純粋な人々や、山賊の佇まいや表情もユニークで不気味。笑い顔の怖さを教えてくれます。

本作は、実生活の破天荒ぶりも有名なジョン・ヒューストン監督の代表作のなかの一本であるだけに、この映画のダイナミズムは凄い。
(本作でアカデミー賞監督・脚本賞受賞)
登場人物のギラギラとした存在感、高鳴る音楽、そして猛烈な砂塵舞うラストシーンに漂う無常感などの桁外れの素晴らしさは、黒澤作品を想起させます。
ハンフリー・ボガードが三船敏郎、ウォルター・ヒューストンが志村喬のようです。

ただ、挫折の物語であっても、ヒューストン作品の底にはアメリカ人らしい陽気さが流れてているように思います。この点が黒澤作品とは異なっている点ではないでしょうか。
なお、映画の公開時期で見ると、ジョン・ヒューストン監督の作品群の方が黒澤監督の作品群より全体として若干先行しています。

 

5人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • Re: これは凄い映画!

    2008/05/16 by 夢寝由来

    > 善人ぶった紳士が突然豹変し暴力をふるい激しい殴り合いの喧嘩になる場面なんて、今の映画も顔負けの凄みのある迫真のシーンです。
    > (ローアングルの視線、即ち殴り倒された者の視線から見る、台詞もない喧嘩のシーンは、無機的で本当に怖い!)

    星空マリオネットさん
    ボギーは格闘シーンが苦手だったようです。
    別の映画ですが“殴り合いを演じさせたきゃジョン・ウェインでも雇え”と言ったそうで、親友ヒューストンはその時の扱いを熟知していたのでしょう。

    > ハンフリー・ボガードが三船敏郎、ウォルター・ヒューストンが志村喬のようです。
    恐れ入りました。そのキャラつながりには全く気付きませんでした。

    あの毒舌家で知られるサム・ペキンパー監督がジョン・ヒューストンだけは誉めていました。二人の共通点は≪敗北者の意地や執念≫を好んで描く事ですね。

  • Re: これは凄い映画!

    2008/05/17 by 星空のマリオネット

    夢寝由来さん、こんばんは。

    > ボギーは格闘シーンが苦手だったようです。
    別の映画ですが“殴り合いを演じさせたきゃジョン・ウェインでも雇え”と言ったそうで、親友ヒューストンはその時の扱いを熟知していたのでしょう。

    そうだったんですか。面白い話ですね。
    殴り倒されて床に這いつくばったボギーの姿は様になっていたんですが、そう言えば彼の殴り合う姿そのものは印象に残っていません・・・

    それから、私にはボギーとウォルターが三船と志村にだぶって見えました。ジョン・ヒューストン監督が描く濃い男達は黒澤作品の男達と似ているような気がします。

    > あの毒舌家で知られるサム・ペキンパー監督がジョン・ヒューストンだけは誉めていました。二人の共通点は≪敗北者の意地や執念≫を好んで描く事ですね。

    トラブルメーカーでもあった二人。周囲から孤立しても自分を貫く姿勢は黒澤監督とも共通するところがありそうですね。

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