夕凪の街 桜の国 (2007)
»ストーリー
USENより
過去と現在をつなぐ、二人の女性の物語
原爆投下から13年後の広島。そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白される。だが彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、やがて皆実に原爆症の症状が……。半世紀後。今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。そんな父を心配する娘の七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に、旭の後を追って広島へ向かう……。
平成16年度文化庁メディア芸術マンガ部門大賞・第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した、こうの史代の原作漫画を映像化。過去と現在の二つの時代を背景に、二人の女性による二つの物語が描かれる。物語の核となる女性を演じる麻生久美子と田中麗奈の演技が素晴らしい。「夕凪の街」の原爆症発症の不安を抱えながらも、原爆で自分が生き延びたことの負い目から愛に臆病にならざるを得ない皆実。さらに、「桜の国」では父の秘密、自分のルーツを知り、それを静かに受け入れる七波。そこから浮かびあがるのは、平和の尊さ、生きることの喜び、二人の女性を通し、家族愛、兄弟愛、恋愛など様々な愛の形が紡がれて行く物語だ。
ユーザーより
生きとってくれて ありがとう
「原爆は落ちたんじゃのうて、
落とされたんよ・・・。」
(なあ、嬉しい?
13年も経ったけど、原爆を落とした人は私を見て「やった!また一人殺せた」って、ちゃんと思うてくれとる?
ひどいなあ。てっきり私は死なずにすんだ人かと思ったのに。
ああ、風・・・。夕凪が終わったんかねぇ。)
昭和33年・夏、広島。
この街は太田川の支流が幾筋も分岐して湾へと注ぐ河口の三角州にあたる。昼は海からの、夜は陸からの風が吹く。そして海風と陸風が入れ替わる時刻は無風となるのだ。
会社帰りの平野皆実(26)は川沿いの道まで来ると、靴を脱いで裸足になった。靴底を減らさぬための習慣である。皆実の家は原爆ドームの北1キロほどのところにある本川沿いの集落にある。粗末なバラックが建ち並ぶ原爆スラムの一角で母と二人暮らしをしている。
「丁度ええ、平野さん見立ててくれるか?」
会社の向かいの洋装店の前をうろうろしている青年がいた。同僚の打越である。好きな人に贈り物をしたいと言う。皆実が見立てたのは金魚の刺繍があるハンカチだった。「振られて突っ返されてもこれで泣きゃええが」そう言い残すと皆実は先に店を出た。
13年前、皆実の家は五人家族だった。
「うちと翠、千田町の小町姉妹ゆうて有名じゃったんじゃから」
その日。末の弟・旭(5)だけは水戸の親戚の家に疎開していて被爆を免れた。父の遺体は見つからなかった。妹の翠(10)は皆実に背負われたまま息を引き取った。
「“長生きしいね”って言うたんよ。あれは自分がもっと生きたいゆうことじゃったんじゃろうね」
「うわっ、ええの?貰ろうても」
川沿いの道を帰る皆実を打越は追いかけてきた。「実家のばあちゃんに編んでもろうた。えかったら使って」と言って取り出したのは見事な手編みの草履だった。皆実は靴を減らさぬために草履を手作りしているのだ。
「それと・・・これも。昨日のお茶のお礼じゃ」それは先ほど洋装店で皆実が選んだハンカチだった・・・。
更新: 名画座の怪人 (2008-08-15 17:40)


![DVD「夕凪の街 桜の国 [DVD]」](http://ecx.images-amazon.com/images/I/510nhupGkmL._SL75_.jpg)




