ストーカー (2002) »特集

「ただ一緒にいたいだけなんだ。」あなたよりあなたの事を知っている人がいたら・・・

2003/02/02 (日) written by フォルティ大滝

「インソムニア」に続き、悪役演技派として邁進中のロビン・ウィリアムズの最新作。

ストーカー

物語の主人公は、大型ショッピング・モールのスピード写真現像係として長年真面目に勤務しているサエない中年男、サイ・パリッシュ。実はこの男、常連客として家族写真を現像に出しにくる”幸福を絵に描いたような家族”の一員になる妄想に耽るという楽しみがあったのだ。そうタイトル通り、いつ「ストーカー」の本性が露呈するかハラハラ・ドキドキのサイコ・サスペンスなのだ。というのも、誰しも他人の生活を羨んだり、現在の自分の状況に失望し現実とは違った世界での生活を頭の中で巡らしたりすることはよくあることだからだ。

映画のポイントは何と言っても”写真”。サイ本人も言っているように、写真は幸福な瞬間しか写らない。恐らくは煩わしい人間関係や面倒な雑事を自然と避け、都合のいい空想の中でしか幸福を手に入れることができなかったサイ。彼にとって仕上がりの良い写真は、まさに人生の全て。サイに付きまとわれるヨーキン一家が写った写真を自室の壁一面に並べて張っているサイの姿は怖いというより、哀しい印象の方が強い。

そう、本作ではストーカー行為による恐怖よりも、自己主張がエスカレートし、ストーカーとしてでしか振る舞うことの出来ないサイのような男の哀しみを重点に置いて描いている。ロバート・デ・ニーロが主演した「ザ・ファン」では、メジャー・リーガーにのめり込んだ果てに、殺人や誘拐までしてしまう男の異常な行動をクローズアップしていた。本作は異常な行動による見せ場づくりでは控えめで、何故サイがそういった行為に及んでしまうのか、彼自身の告白に基づいて回想していく展開が面白い。サイに付きまとわれるヨーキン一家は、家庭内不和によりハタから見えるほど実は幸福ではない。監督のマーク・ロマネクは傑作「タクシー・ドライバー」のトラビスの人物像を目指したというだけあって、なるほどサイの行動や思想には”彼なりの正義”があったというわけか。ただ、ヨーキン家の軌道修正を図ろうとしていたというよりも、自己に都合のよい妄想にふけるストーカーの”ないものねだり”の逆上が動機としては上。その意味でも、サイの深層心理、内面を表現する必要があったわけだ。

几帳面で真面目、孤独で心に傷を負うサイ・パリッシュを演じるロビン・ウィリアムズが実に上手い。整理整頓された職場や無機的な自宅を毎日往復し、透き通るような白い肌と金髪メイクのロビンは強烈に孤独感と切なさを誘う。”おじになった気分だ。”と言って微笑するサイの笑顔は一度見たら忘れられない完璧な演技だ。元々コメディ王としてのイメージが強いロビンがストーカーを演じているので、本編同様「まさか、あの人がっ!!」という驚きと恐怖は効果的に増し、成功していると言える。

原題は”One Hour Photo”意味深なタイトルだ。たった一つ、邦題の「ストーカー」。言葉の持つ意味やパワーが限定的な範囲内の意味において強いため、タイトルには不向きだったように思えて残念だ。

2003年02月01日より、シャンテ・シネほか全国東宝洋画系にてロードショー!

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