vivie さん
女性
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2008年10月9日 to トウキョウソナタ

(c)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会
「こんな実も葉もない映画ってあっていいものか」という某評論家のお言葉にのけぞってしまいましたが、わたくし的には「花も実もある映画」でした。今までの黒沢作品では不可解なことも多かった「実」の部分が、今回は明快で、また共感もできるということで高得点でした。でも、やっぱりヘンなところも健在。「三時間前」という字幕から始まるクライマックス、「さあ、始まるでえ」と、ワクワクしてしまいましたが(笑)、思いっきり虚構に見えて、映画的なリアリティは湛えており、すっかり引き込まれてしまいました。そのエピソードの収束点も意外ながらもストンと腑に落ちる快感。撮り方によっては陳腐になりかねないラストも、そこに差し込む希望の光に感動の涙があふれました。「花」の部分は相変わらず素晴らしいですね。オープニングから「むむっ」って感じで、何度か息を呑むショットもありましたが、室内シーンの心地よさがまた格別でした。
キャストも好演でしたが、特に香川照之。リストラから就活とプライドを傷つけられて行く社会での顔(カラオケの場面に絶句。波岡一喜を嫌いになりそう。笑)、それでも権威を保とうとする家庭での顔、それを少しアクセントの強い演技でリアリティを感じさせるなんて・・・・。子役の井之脇海クンも素晴らしいです。演技もさることながら、その顔に見惚れました。柳楽クンを彷彿させる力のある目と、幼い感じの残る頬から口元が絶妙のバランスで、「アンバランスのバランス」という言葉が頭に浮かんだりしました。
作品全体も「アンバランスのバランス」といってもいいかもしれません。現代社会に存在する諸問題とささやかな希望というアンバランス。リアリティとフィクションのアンバランス、悲劇性と喜劇性のアンバランス、子供っぽい大人と大人のような子供のアンバランスなどなど。それらさまざまな要素は、しかし全体としては危ういバランスを保っているような・・・・。とにかく、わたくし的には映画を観る歓びに満ちた一作でした。
2008年10月5日 to イントゥ・ザ・ワイルド

(c) MMVII by RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC and PARAMOUNT VANTAGE, A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved.
ショーン・ペンの監督作は初めてです。題材に興味を引かれて観に行きました。恵まれた家庭環境にありながら、あえて物質的な成功に背を向け、放浪の旅に出た青年を描くロードムービー。青臭いけれど真摯で純粋な主人公への共感に満ちた、とても瑞々しい作品で、私も少なからず共感しました。
社会的には成功した人物、しかし家庭では父親失格という主人公の父親がキーパーソンだと思います。そんな父親への反発が彼の行動の出発点となり、「父親の期待なんか裏切ってやる」といった、一種の復讐心がエネルギーになっていたような気がします。無意識のうちに、不平等な社会でぬくぬくと育った自分を罰したい、と思ったのかもしれません。洪水多発地域での野宿、禁止されているカヌーでの川下りといった無謀な行動も、そう考えると納得が行くように思います。
しかし、旅の途上で出会う人々との触れあいでその頑なな心が溶け始め、さらに大自然の中で内省を深めることにより、ある種の真理に到る・・・・、無知や無鉄砲が招いた悲劇的な側面は確かに痛々しいものの、その成長の軌跡には胸を打たれ、清々しいといってもよい印象が残りました。
最終目的地アラスカでの生活とそこへ到るまでの旅や生い立ちを交互に語る構成が効果的、またキャストも好演で(特に久々のハル・ホルブルック)、2時間28分という長尺も気にならない見応えのある作品になっていました。
2008年9月27日 to アキレスと亀
『TAKESHIS’』、『監督・ぱんざい!』と、「訳分からんけど何か面白い」という作品が続いた後の北野作品、「今度は一体どんな映画!?」と、ワクワクしながら観に行きましたが、涙あり、笑いあり、訳も分かる作品でとても楽しめました。
第一部の少年時代、主人公に次々と襲いかかる不条理な悲劇。泣き虫の女中さんや寒々しい田舎の風景など、すでにここから泣き出してしまった私(笑)。特に少年の最後の表情には胸を突かれました。
第二部の青年時代は60年代あたりでしょうか。画家を志す青春群像に胸が熱くなり、仲間がひとり、またひとりと欠けてゆく寂寥感にやっぱり涙。でも、ハプニングのようなアートの場面が楽しかったですね。
ポップアート4連発はどのタイミングで登場したのかな。あまりにもインパクトが強くて忘れてしまいましたが、元の絵との落差に反射的に大笑い。そこで笑いのタガがはずれてしまったようで、そのあとは笑いっぱなし。悪魔の囁きのような画商のアドバイスに乗せられて、右往左往する中年画家とその妻。でも、笑っているうちにふと気がついた。自分だって、じたばたしながら生きてきたんじゃなかったのか、と。で、今度は共感の涙が・・・・。
悪戦苦闘しながら夢に向かって走り続けた主人公がアキレス、主人公の核に存在するただ絵を描くのが好きな自分が亀、というのが私の解釈。でも、そんなじたばた生きる人間を、北野武は否定していないとも思います。生きるということはじたばたすることなんだと、共感を持って見守っているような気もして、何だか感動してしまいました。
その感動の余韻か、帰り道では、ケバいネエチャンやイカレたニイチャンを見ても、「みんな生きてるんや」と、視界が滲んでしまうのでした(笑)。
たけし自筆の絵も楽しかったですね。「ポップアート4連発に大笑い」と書きましたが、最初の二作はモデルへの愛が感じられる素晴らしい作品でした(もっとじっくり見たかった)。ノック師匠の髪型が、とってもキュートだったわ。
2008年9月21日 to おくりびと
企画の発案者はモックンのようですが、面白いところに目をつけましたね。誰もが無関係ではないけれどよく知らない職業、納棺師という異色の題材が最大の勝因。題材は異色ですが、涙あり笑いありの観客を選ばない作品。平日でもけっこう混んでいた客席、終映後は、そこここで「私の場合は・・・・」とお喋りに花が咲いているようでした。
失業したチェロ奏者とWEBデザイナーの物分りのよい妻。ふたりの悩みにも葛藤にもそれほどの深みはなく、さらさらと流れて行くようなストーリーは若干甘いような気もするのですが、モックンが関わるそれぞれのご遺体とその遺族の人間模様が、面白くもあり共感するところもあり。わたくし的には特に山田辰夫と杉本哲太に大泣きでした。
個性派ぞろいのキャストが大きな見所。山崎努、吉行和子、笹野高史、余貴美子といった曲者たちの演技が楽しく、そんなベテラン勢に囲まれ、モックンと広末涼子が演じる若夫婦の清新さもひときわ引き立ったような気がします。
山形の美しい四季とチェロの柔らかい音色も心地よく、楽しめる一作になっていました。
2008年9月15日 to 言えない秘密
俳優ジェイ・チョウは結構好きなのですが、今回は監督、脚本、音楽、主演の四役を兼ねた作品、見逃すわけには行きません。今までのトボけた役柄とは違って、ピアノの才能にあふれてはいても普通の学生の役。それを普通に演じていたので、個性だけの人じゃなかったんだとちょっと驚きでした。もちろん初監督作とは思えない作品自体にもびっくり。
それにしても、高校生だったなんて・・・・。芸術大学の音楽科の学生だと思ってたなあ。相手役のグイ・ルンメイもそうだけど、とても高校生には見えないもの(笑)。
まあ、余談はさておき、一部ではずい分以前から話題になっていた作品。核心やストーリーにはなるべく触れないよう用心していたのですが、公開までにはだいたいの内容、察しがついてしまいました。でも、全然没問題(ノープロブレム)。ストーリーそのものより、細部の豊かさを味わうべき映画。負け惜しみじゃないけど、そんな風に思いました。特に前半の流麗ともいえるタッチが心地よかったです。
ふたりの女優さんも素敵でした。特にグイ・ルンメイの瑞々しさに魅かれます。彼女の魅力を最大限に生かした撮影は、侯孝賢作品でお馴染みの李屏賓。光の捉え方にもうっとりでした。
大林映画と少女マンガを足して2で割ったような青春映画。大好きなジャンルなので、本音をいうと、やはり予備知識なしに観て、思い切り驚きたかったなあと思います。
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2008年9月13日 to ダークナイト

TM & (C) DC Comics (C) 2008 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
わたくし的には、『バットマン ビギンズ』が可もなし不可もなしだったので、本作もパスするつもりだったのですが、あまりにみんなが「凄い、凄い!」と言うので、思わず観に行ってしまいました。
確かにヒース・レジャーのジョーカーは凄かったです。あのメイク、しゃべり方、目の動き、手の動き、舌の動き、思い出すだけで頭がクラクラします。何でこうなってしまったのか、その理由は謎。目的は金銭といった物質的なものではなく、敵を自分と同じ種類の人間に貶めること。対する、金髪碧眼の絵に描いたような「ミスター正義」が標榜する「絶対の正義」にも「何か嘘くさいなぁ」と思っていたのですが・・・・。
時に映画の中の犯罪者に肩入れして、周囲の顰蹙を買う天邪鬼な私、ミスター正義にはちょっと反発を感じましたが、さすがにジョーカーには共感できなかったです。いわば「倫理の紊乱者」と名づけたいようなジョーカーの存在・・・・、怖かったです。
で、終盤の展開には息を呑み、その結末にはちょっと感動してしまいました。終わりよければ全てよし。しかしアクションシーンのつるべ打ちとかは、わたくし的にはあまり有難味がなくて、中盤ではアクビ連発。
現実世界にリンクするようなリアルさは興味深いものがありますが、コミックの映画化としては如何なものでしょうか。振り返れば「牧歌的」とも思える『ティム・バートン版バットマン』が懐かしくなったりして。
でも、香港の夜景に舞うバットマンと、ナースのシーンは好きだったなあ。
2008年8月29日 to それぞれのシネマ〜カンヌ映画祭60回記念製作映画

(C)2007 バンダイビジュアル TOKYO FM 電通 TV朝日/オフィス北野
(C)2007 Festival de Cannes- Elzevir Films. All Rights Reserved.
カンヌ映画祭60周年記念企画ということで、カンヌにかかわりの深い33組の監督によるオムニバス。東京フィルメックスやユナイテッド・シネマ豊洲での上映は地方在住者には縁がなく、もう映画館では観られないと思っていたので、一般上映のニュースに接した時からとても楽しみにしていました。オフィス北野にスペシャル・サンクスです。
一作品あたりの上映時間はわずか3分。しかし3分でも様々なことができるもので、個性豊かな作品が並び、夕刻の移り変わる自然光を捉えた『夏の映画館』(これが本当の「マジック・アワー」!)を幕開けとして、涙あり、笑いあり(首をひねるものも二、三)、楽しい時間を過ごしました。
「映画館」がテーマなので引用される映画も多く、2時間で映画の歴史を体感できます。監督名が最後に出るのでクイズも楽しめます。私の専門は中華系、もちろん全問正解でした。といっても、ホウ・シャオシェンの作品は、実は一般上映が決まる前に YouTube で見てしまい感動が半減、一生の不覚でした(涙)。リンチ、カウリスマキ、ルルーシュも正解。終映後は、自分自身の映画的記憶も交えて、余韻にひたりながら帰りましたが、頭の中では、『軽蔑』のテーマと『ロミオとジュリエット』のテーマが交互に響いていました。
笑った作品
北野武 二度目ですが、「農業一枚」にまたフフフ。外国語字幕ではどうなるのかな。英語だったら「One farmer」?、フランス語では?
ラース・フォン・トリアー 上映中の私語。共感度100パーセントでした。
ロマン・ポランスキー 『エマニエル夫人』とあえぎ声。『エマニエル夫人』は昔、試写会で観たことがありますが、宣伝コピーは確か「きれいなポルノ」!?
泣いた作品
クロード・ルルーシュ 父は母をフレッド・アステアの映画でナンパした。私の両親も初めて一緒に観た映画はアステアの『青空に踊る』だったとか。
ツァイ・ミンリャン 家族がみんな映画好き。祖母は串刺しの梨で後の座席の男(祖父?)を誘う。艶かしいのに、切なくもあり、最後に流れる中華歌謡もよい。
チェン・カイコー 少年は30年後にも映画を観に行った。
ベストファイブは
1.イニャリトゥ ゴダールの『軽蔑』と泣く女。『アモーレス・ペロス』は途中退場、『21g』は未見、『バベル』には疲れたけれど、これには感動。
2.ウォン・カーウァイ 濡れているような赤、レスリー・チャンに似た男優、中文字幕に陶然。
3.ツァイ・ミンリャン 上述。
4.コンチャロフスキー 『8 1/2』を独り占めするもぎりのおばさん。私も老後はもぎり嬢(?)になりたかったんですけど、今はシネコンの時代・・・・。
5.ナンニ・モレッティ 『ロッキー・ザ・ファイナル』を見逃したくせに共感。でも、声を大にして言いたいこと、私も一杯ありますから(笑)。
そして特別賞
テオ・アンゲロプロスとジャンヌ・モロー 圧倒されました。
トリビアを少し
引用されている映画は、ゴダールのものが一番多かった。
トリュフォーの『家庭』、イタリアでの題名は「気にするな、ただの浮気だ」(by モレッティ)。
ホウ作品の映画館の看板に描かれていた『養鴨人家』は、「台湾映画の父」と呼ばれる李行(リー・シン)の代表作。『恋恋風塵』にも登場します。
2008年8月25日 to ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン
「珈琲時光・パリバージョン」といった趣きの本作、オルセー美術館の開館20周年事業として製作されたようですが、外国人を起用するなんて太っ腹ですね。フランスでは侯孝賢は人気があるのかな、それともその芸術性に重きを置いた選択なのかな。ともかく、ファンの私はさっそく観て来ましたが、公開二日目の日曜日というのに空いてました。小津生誕100年を記念した『珈琲時光』はけっこうヒットしたみたいで、文句を言う人が一杯いましたが、今回は大丈夫そうですね。って、喜んでいいのかな(笑)。
主演はジュリエット・ビノシュ、私の苦手な女優さん。初めてこの映画製作のニュースを見た時、侯孝賢+ジュリエット・ビノシュ、どんな映画になるのかなと想像がつかなかったのですが、結論からいうと、ビノシュはとても良かったです。感情の起伏の激しい役で、ヒステリックになったりもするのですが、けっこう共感してしまいました。床に散らばるたくさんの書類、でも捜す書類が見つからなくて涙目になってるビノシュに、思わず自分自身を見たりして・・・・。
そんな雑事や時間に追われる日々に、しかし、ふと訪れる安らぎに満ちた時間。何気ない日常の描写の中から、そんな奇跡的な瞬間を浮かび上がらせる侯孝賢、私はいつものように魅了されてしまい、二度ほど涙ぐんでしまいました。
アルベール・ラモリスの『赤い風船』へオマージュを捧げた作品でもあります。子供の頃に観たことがある『赤い風船』、本作の前に、もう一度観て来ましたが、生活感のあるパリの描写が素敵でした。本作でもそれは同様。さらに狭いアパルトマンの描写が面白かったです。左側にドア、右奥に狭い台所がある居間を捉えた画面が多かったのですが、夕刻、居間には灯りがともり、台所には青い外光が差しているシーンにうっとり。カメラはコンビの李屏賓、映像はいつも通りの素晴らしさでした。
2008年8月22日 to カンフー・ダンク!
ジェイ・チョウといっても、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、中華圏で一番人気のある歌手。私も当初は知らなかったのですが、初主演の『頭文字D THE MOVIE』を観て、その面白い個性が気に入ってしまいました。
監督のチュー・イェンピンも、やはり馴染みがないと思いますが、台湾映画のヒットメーカーで、金城武が王家衛に出会うまで師と仰いでいた人です。何でこんなことを知っているかというと、当時、私は金城ファンだったからで、日本未公開の金城主演作品も何本か観たことがあるのですが、あまり笑えないコメディでした(香港風のベタとも違う、ちょっと泥クサイ感じ)。
というわけで、本作もそれほど期待せずに観に行ったのですが、けっこう垢抜けていたのでちょっと驚き。アクションやバスケのシーンは迫力あったし、何よりお目当てのジェイが、天然系の個性を全開していて楽しめました。エリック・ツァンもいつも通りいい味を出しているし、ふたりが絡むシーンは和めます。特に野良猫さんも陪席の路上のレストランにニコニコ。
ただし、使い古されたような設定やギャグは相変わらずで、思わず苦笑。「メガすげェェェけど、ちょいトホホ」な作品でした。でも、私は嫌いじゃないなあ(笑)。
2008年8月22日 to インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

TM & (C)2008 Lucasfilm Ltd.. All Rights Reserved. Used under authorization.
このシリーズ、もちろん人並みに好きでしたが、二十年ぶりの新作といっても、それほど鑑賞意欲はわかず、見逃したら見逃してもいいやと思ってたんですけど、時間がちょうど都合よくて他の映画と連チャンで観ました。
結果的にはなかなか楽しめました。見所はテンコ盛りなのに、全体的にはノンビリしているところが懐かしくもあり、また新鮮でもあり、という感じでしょうか。過去の映画のパロディ満載なのも楽しいし、ハリソン・フォードはやっぱりチャーミングだし、50年代のファッションも素敵でした。
パロディといえば、蟻の大群で『黒い絨毯』という映画を思い出しました。記憶に残る最初の映画かもということで、幼児の頃に観たのですが、すごく怖くてトラウマになってしまい、黒い粒粒の集まりは今でも苦手。本作ではCGですごくリアルでしたが、そんなに怖くなかったですね。リアルすぎると嘘が丸見えというわけで、またまたCGの功罪など考えてしまいました。
しかし、「そんなアホな!?」という描写も、こうヌケヌケとやられては笑うしかないです。そういう稚気たっぷりなところ、昔は大好きだったなあと思い出に耽ったりもしました。まあ、ある意味では、「これが映画だ!」と言えるかもしれませんね。
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